パレア若狭 映画の日

 

 

 

 

 

 

時代を超えて読み継がれる児童文学の名作や人気漫画を、豊かな情感と想像力で映画化した4作品を上映!

2024年1月19日(金)

・10:00-11:50 次郎物語

・14:30-16:17 風の又三郎 ガラスのマント

2024年1月20日(土)

・10:00-11:57 少年時代

・14:30-16:34 お引越し

料金

・1作品のみ      500円

・1日券(2本立て) 800円

チケット発売日

2023年10月28日(土)(一般・WEB)

WEB購入はこちら ⇒ https://yyk1.ka-ruku.com/parea-wakasa-s/showList

◎開場時間は各上映時間の30分前です

映画の日チラシ ⇒ R5映画の日

 

作品解説

〇次郎物語[1987年  西友=学習研究社=キネマ東京]

[スタッフ]

原作:下村湖人 脚本:井出雅人 監督:森川時久 撮影:山崎善弘 照明:加藤松作

録音:木村瑛二 音楽:さだまさし、 渡辺俊幸 美術:金田克美

[出演者]

俊亮:加藤剛 お民:高橋恵子 次郎(10歳):伊勢将人 次郎(6歳):樋口剛嗣

喜さぶ:永島敏行 東医師:中谷一郎 宗太郎:高松英郎 勘作:井川比佐志

恭亮:芦田伸介 おなか:山岡久乃 お浜:泉ピン子 祖母:大塚道子

(カラー/アメリカン・ビスタ/モノラル/110分)

理想主義と自由主義を貫いた教育者、小説家として知られる下村湖人。その自伝的教養小説である同名原作は名作として名高く、これまでに3度映画化されている。1941年の島耕二監督作品、1955年の清水宏監督作品、1960年の野崎正郎監督作品、いずれも佳作となっている。

母が病弱のために里子に出されて成長した次郎は、里親のお浜を慕い両親の住む本家にもどっても家族になじめず、衝突をくり返す。旧家の格式を重んじる祖母はそんな次郎を嫌うのだった。ちょうどその頃、父が借金の保証人になったため家が没落し、母は実家に戻り病を癒すことになった。

監督の森川時久はこの古典的名作を、当時の社会的な背景を押さえながら丁寧に描き直し、叙情的感銘を導きだしている。次郎が成長していく故郷、その田園風景の美しさと母を演じた高橋恵子の演技が印象的である。

 

〇風の又三郎 ガラスのマント [1989年  朝日新聞社=東急エージェンシー=日本ヘラルド映画]

[スタッフ]

原作:宮沢賢治 監修:入沢康夫 脚本:筒井ともみ 脚本・監督:伊藤俊也

撮影:高間賢治 照明:安河内央之 録音:橋本泰夫 音楽:冨田勲 美術:村木忍

[出演者]

かりん:早勢美里 かりんの母:檀ふみ 又三郎:小林悠 又三郎の父/かりんの父:草刈正雄

一郎:志賀淳二 嘉助:雨笠利幸 悦治:宇田川大 おたね婆:樹木希林

かりんの祖父:内田朝雄 使いの男:岸部一徳 タバコ専売局の男:すまけい

(カラー/アメリカン・ビスタ/ドルビーステレオ/107分)

 

宮沢賢治の同名原作は、1940年に島耕二監督の手で映画化されている。良質の叙情をたたえ、印象的な音楽もあいまって、その年度の「キネマ旬報」ベストテンの第3位に選出された名作である。伊藤俊也監督のこの作品は、そのリメイクではあるが、随所に新しい創作がなされており、見事に平成版の〈又三郎〉となっている。

母と二人暮らしの少女、かりんの前にあらわれた高田三郎は、二百十日の風の日に転校してきたために「風の又三郎」と呼ばれる。実際、彼が来てからは不思議なことの連続だった。

東北地方の豊かな自然を背景にした、子供たちの自然な演技は長期合宿による交流の成果である。冒頭のカメラの大胆な動きは、観客を一気にファンタジーの世界へと誘い込む魅力に満ちており、独自の視点で物語性に富んだ映像世界をつくりあげる伊藤監督の本領が発揮されている。

 

〇少年時代[1990年  「少年時代」製作委員会]

[スタッフ]

原作:柏原兵三、藤子不二雄Ⓐ 脚本:山田太一 監督:篠田正浩 撮影:鈴木達夫

照明:水野研一 録音:西崎英雄 音楽:池辺晋一郎 美術:木村威夫

[出演者]

風間静江:岩下志麻 風間修作:細川俊之 風間進二:藤田哲也 大原武:堀岡裕二 須藤健介:小日向範威

田辺太:山崎勝久 佐伯美那子:小山篤子 風間辰男:河原崎長一郎 風間しげ:三田和代 田辺昭子:仙道敦子

風間まき:鈴木光枝 増田先生:津村鷹志 風泊駅・駅長:大滝秀治 校長先生:芦田伸介 写真館の主人:大橋巨泉

(カラー/アメリカン・ビスタ/モノラル/117分)

 

学童疎開の体験を綴った作家・柏原兵三による自伝的小説「長い道」から着想を得て、藤子不二雄Ⓐ自身の戦中体験を盛り込んだ漫画「少年時代」を、藤子Ⓐ自らがプロデューサーとなって監督に篠田正浩を指名し、篠田の後輩にあたる山田太一を脚本に迎えて映画化した。「週刊少年マガジン」連載当初は読者からの反響も限られていたが、1979年の連載終了後に圧倒的な支持を受け、藤子Ⓐが長いあいだ心に温めていた企画である。

東京から富山に疎開してきた小学5年生の進二と、地元のガキ大将・武との触れ合いを軸として、1944年の夏から終戦の夏へといたる季節の移り変わりを表す美しい映像とともに、少年たちの心の成長の様子を丹念に描き出している。逼迫する戦況や大人たちの姿はほとんど画面上から遠ざけられ、東京出身者と疎開先の少年たちを取り巻くぎくしゃくした関係や、いじめ等が淡々と描かれる。やがて終戦が訪れて進二が東京に帰る日となり、みるみる小さくなってゆく汽車を必死になって追いかける武の姿で、少年たちの心のわだかまりも一気に解消される。

主題歌にはロングセラーとなっている井上陽水の同名オリジナル曲。日本アカデミー賞・最優秀作品賞ほか受賞多数、「キネマ旬報」ベストテン第2位。

 

〇お引越し[1993年  読売テレビ放送]

[スタッフ]

原作:ひこ・田中 脚本:奥寺佐渡子、小此木聡 監督:相米慎二 撮影:栗田豊通

照明:黒田紀彦 録音:野中英敏 音楽:三枝成彰 美術:下石坂成典

[出演者]

漆場レンコ:田畑智子 父 ケンイチ:中井貴一 母 ナズナ:桜田淳子

布引ユキオ:田中太郎 大木ミノル :茂山逸平 高野和歌子: 須藤真理子

木目米先生:笑福亭鶴瓶 橘理佐:青木秋美 砂原老人:森秀人 砂原節子:千原しのぶ

(カラー/ヨーロピアン・ビスタ/モノラル/124分)

 

大胆なカメラ移動を駆使しながら各カットを長く撮る独特の「映画術」で知られる相米慎二監督は、『ションベン・ライダー』(1983)や『台風クラブ』(1985)など、少年少女たちの不安定な心理や生活世界をその技法で巧みに演出し、1980年代以降の日本映画を代表する映画作家となった。

この映画では、やがて離婚するために別居に入った両親を持つ小学6年生の少女レンコをめぐって、彼女が感じる心の葛藤や、新しい自己を見い出してゆく過程がみずみずしく、またラストシーンでは自我に目覚めた彼女の内面が幻想的に描写される。

日本映画の大きなテーマの一つである「家族」の解体と再生の物語に、相米監督はまったく新しいアプローチから挑み、1990年代における家族像の「現在」を浮き彫りにしている。撮影面では、ハリウッド映画の経験もあり、後に大島渚監督の『御法度』(1999)でも技量を発揮したカメラマン栗田豊通がその力強い画面作りに貢献している。「キネマ旬報」ベストテン第2位。